「なぜなぜ分析」の3つのキーポイントについて考えてみたいと思います。
前回、「なぜなぜ分析」の悪い事例についてご紹介しました。
●経営者のせい
○○の問題が起きた
↓
△△部品が変形した
↓
試作段階の検討が不充分だった
↓
開発人員が不足している
↓
人員を増やす予算がない
↓
経営者が悪い
まずこの第1の課題として、
原因と結果が一直線になっていると書きました。
■結果は複数の原因によって起こる
これは TOC の考え方でもあるのですが、ある問題現象は別の問題現象の組み合わせによって引き起こされます。
たとえば、この「なぜなぜ」の事例で言えば、「△△部品の変形」というのは、全てが変形していたわけではなく、試作時点は問題なかったのでしょう。つまり、実際に生産が始まった時に何か試作時点とは変わった条件が加わったために変形が起きているはずです。また、変形しなかった部品もあるかもしれません。
つまり、その複数の要因というものをすべて挙げないと、本当の問題点にはたどり着けません。
なぜなぜ分析では、この複数の原因を「
枝分かれ」と表現します。
※注記:原因が必ず「枝分かれ」指定なくてはいけないということではありません。一つだけという場合もあります。ただし、複数の要因があることが多いですから、上記の例のように全部ひとつだけということはありえません。
■机上で考えては正解は出ない
古い刑事ドラマなどでは、「現場百回」など言われて、なんども犯行現場にいくことで、何かを発見するというシーンがありました(最近は見ないので知りません)。
問題が起きたところへ行き、問題を見た人と、その瞬間を再現して考えてみることで本当の問題が発見できます。
それをこの事例では、「不充分だった」という曖昧な言葉で表現しています。じゃぁどうなれば十分なのかが定義できない抽象語を使った時点で、頭のなかでこねくり回しているだけなのがバレバレです。
■決め付けの「なぜなぜ」では対策にできない
こういう抽象的な単語をつかったなぜなぜ分析は、たいてい考える人の結論が先にあります。
普段の問題意識が、新しい問題発見で刺激されて、その意識している問題点と結びつけようとします。その結果抽象的な言葉になるのです。
これを私は、
決め付けのなぜなぜ分析と読んでいます。結論ありきの分析など意味がありません。
分析したように見せかけているだけです。
■複数の要因となった事実を出す
つまり、なぜなぜ分析は、あくまでも
事実を出すことを主題とすべきなんですね。
結果を出した要因となった事実です。
「なぜ?」と聞かれると、原因を答えたくなります。このとき、「原因」が事実(現実の事象)でないと分析にはならない、ということです。
■参考図書
といって唯一の正解があるわけではありませんし、私ごときが正しい説明ができるとも思えないので、以下の本をご紹介しておきます。
『
なぜなぜ分析 徹底活用術―「なぜ?」から始まる職場の改善』
※ものごとの原因を突き止める簡単な思考法が「なぜなぜ分析」です。なぜ? を繰り返していくと、いままで気が付かなかったさまざまな現象とその原因が見えてきます。仕事改善に業務改善などに適用すれば、大きな成果が期待できます。本書では、なぜなぜ分析のポイント、正しい使い方などをていねいにわかりやすく説明しています。
ただし、本書は読むのは結構骨が折れるので、以下の本が取っ掛かりとしては楽かもしれません。
『
問題解決力がみるみる身につく 実践 なぜなぜ分析』
※問題の本質は「なぜ?」を適切に繰り返すことで見えてきます。物事を論理的にとらえ、ミスやトラブルの原因を的確に追究したいビジネス人必読。「なぜ?」の問いに答えていくだけの、誰にでもできる究極の問題解決手法をわかりやすく解説します。
『
生産・品質トラブルを防止する なぜなぜ分析と変更管理』
※モノづくり現場では何かとトラブルに見舞われている。そのトラブルの再発防止策を講じられるようにするのが「なぜなぜ分析」で、トラブルの発生を未然に防ぐようにするのが「変更管理」である。本書は、なぜなぜ分析と変更管理をわかりやすく解説したもので、再発防止から未然防止につなげていく改善の大きな手がかりを提供してくれる現場改善の実務書となっている。
『
「なぜなぜ分析」習得の7ステップ―真の原因をつかめ!』
※問題解決手法の代表である「なぜなぜ分析」本来の目的とは、仕事の「あるべき姿」とのズレを見つけること。しかし、結果を急ぐあまりの思いつきや、論理に飛躍がある分析も多い。本書では、現場・現物・現象で徹底的に観察し、原理・原則によって問題発生のしくみを理屈付けしながら解いていく。体系的に、誰でも、いつでも、簡単にできる「なぜなぜ分析」の入門書。
『
なぜなぜ分析実践指南―現場トラブル徹底攻略法』
※製造現場のトラブル解決の虎の巻! 「なぜなぜ分析」とは、製造現場でのトラブルの真の原因を、発生現象をスタートに「なぜ」「なぜ」…と繰り返して追求していく画期的かつ効果的な分析手法です。現場で抱えている問題を「なぜなぜフローモデル」にあてはめて考え、「なぜなぜケーススタディー」を参考に展開していけば、トラブル解決の方法がきっと見つかるはずです。
私は『
問題解決力がみるみる身につく 実践 なぜなぜ分析』が取っ掛かりには良かったと思います。『
なぜなぜ分析 徹底活用術―「なぜ?」から始まる職場の改善』は結構ハードルが高いかのように思いました。もし製造系でなぜなぜ分析を活用したい方には、最後の『
『なぜなぜ分析実践指南―現場トラブル徹底攻略法』が最適かと。
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