■プロジェクトの成功率
一般に、こうした「プロジェクト」がほんとうの意味で「成功だった」といえるのは、3割に満たないとか言われます。本当かどうか知りませんが。
これはもともと持っていた目標が曖昧で、ROI(投資対効果)が測定できないために、結果として「みんなよくがんばったね」で終わるようなものが少なくない、という経験に照らせば、「まあ、ある意味、そうとも言えるかもしれない」と思えます。
逆に言えば、別の言い方をすれば、あらゆる会社で「プロジェクトの成功率は100%」とも言えるわけですね。
一方で、ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズというコンサルティング会社では、その成功率(つまり顧客の要望に答え、投資対効果が満足された確率)は 95% と公表しています。
これは通常の意味で考えれば驚異的な数字です。それを対外的に言えるだけでもすごいことかもしれません。
本書は、そのコツの一端を12のテーマにまとめたものです。
これだけをやれば、プロジェクトがうまくいく、ということはないとは思いますが、すくなくとも、
今までうまく行かなかったプロジェクトが好転する可能性はあると思います。
個人的にも、このやり方は取り入れています。
環境の問題やその他の影響因子もありますが、結構うまい方向に持っていってくれる方法のようです。
ひとつでもふたつでもとりいれられれば、効果はあるかと。
■概要
プロジェクトを成功裏に治めるために、ケンブリッジでは12の方法論を実践している。
◆01.プロジェクト・ゴールとCSF(主要成功要因)
プロジェクトには明確なゴールが必要であり、そのゴールを達成するために必須なキーとなるCSFが必要である。これが明示することはプロジェクトを成功させる最低必要条件である。ゴールが明示し、経営層を巻き込み、そのゴールを達成するか否かを判断基準にする。
◆02.ノーミング・セッション
プロジェクトを開始するにあたり、メンバーの意思統一をしなければならない。ノーミングセッションは以下のように行う。
(1) プ□ジェクト(あるいはチーム)概要の共有
(2) メンバーの決意表明
(3) 期待値の交換
(4) サブ □ ール決定
(5) グラウンド・ルールの決定
ノーミングは少数のメンバーで行い、関係者全員でおこなうものを「キックオフ」と言う。
◆03.グラウンド・ルール
メンバーのプロジェクトにおける好ましい振る舞いを規定する。グラウンドルールは、それを常に意識でき、だれでもすぐに見えるように壁に張り出しておくといい。
◆04.セッション・ゴールとアジェンダ
「このセッションが終わった時にどうなっていたいのか」が判断できるもの。だれでもおなじ判断ができるような表現でなければならない。アジェンダはセッションのプロセスのデザインである。セッションのゴールから逆算してその必須条件を抽出し、その条件が達成される方法を配分する。
◆05.セッション・プラン
セッションをプロジェクトの期間に渡り定義をする。内容・参加者。キーマンになる参加者のスケジュールを前もって抑えておく効果がある。セッションの終了によって、プロジェクトのマイルストーンになる。
◆06.課題管理
課題管理は特定の誰かががんばるのではなく、プロジェクト全体で課題を解決していく仕組みとして定義されなければならない。
問題:プロジェクトの目的達成を阻害すると予想される事象。困りごと
課題:「問題」の発生原因を分析した結果、これを解決することがプロジェクトの目的達成に不可欠であると判断されたもの。問題に対する解決策
TODO :「課題」を解決するためにやるべきことを分解し、「いつまでに、だれが、何をすべきか」を明確にしたもの
「問題らしきもの」も抜けもれなく捉える。すかさず書く。書いた問題は「トリアージ」する。
◆07.チェックポイント
短い時間で行う振返り。これはセッションの終了後、定例会、誰かが野郎とった時に実施する。
セッション・チェックポイント
セッションの最後に設ける振返りの場
セッションの進め方で、よかった点、改善すべき点、気付きや感想を出し合ってセッション品質の向上を図る
チーム・チェックポイント
定期的メンバー全員で集まって進捗状況や課題を共有する場。
目的1 チームの進捗状況の共有と今後の進め方の決定。遅れているものについては、遅れ具合、理由、回復方法の確認を行う。
目的2 メンバーの学習を進める
やること:
・課題の進捗状況
・今後のタスクの進め方
・課題や懸念事項
・TODOの確認
時間がなくとも必ずやること。時間を決めること。楽しくやること。
◆08.「80・20」(エイティー・トゥエンティー)
パレートの法則。少ない労力で大きな効果を出す。
・全体像を捉える
・常に必要性を疑う
・範囲を絞り込む
・程度を考える
・優先度をつける
◆09.ファンクショナリティ・マトリクス(FM)
目的:やらないことを明記すること、「やる」「やらない」を決めるプロセスを見える化すること
業務プロセスを分析してシステム要件を洗い出し、その要件を記載するもの。
機能名称だけを記載し、そこに「レーティング」(重要度をいくつかの視点で評価する)を記入する
レーティングは
・ビジネスベネフィット
・技術的容易性
・組織の受け入れ体制
の3つで評価する
◆10.イエローフラッグ
困っていることを周囲に知らせる。回復不能なレベルのものは、レッドフラッグと呼ぶ
問題の早期発見、メンバーの成長が促進される
問題を抱え込んでしまわないようにする。
問題を抱え込んでしまう理由
・問題・進捗遅れを自覚できていない
・自覚はあるが、影響の大きさを理解していない
・自覚はあるが、自分で何とかすべきと思っている
・自覚はあり相談もしたいが、周りに遠慮して言い出せない
20分ルール―20分考えてわからなければ誰かに相談すべし
◆11.タイムアウト・ルール
議論が循環しているとき、新たな意見が出ない時、感情的な議論になっている時、うまく"ファシ"れていないときには一旦ブレイクする。
タイムアウトはグランドルールに入れる
◆12.Have Fun!
楽しく!
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